国際リニアコライダー 『愛国心とは、ならず者達の最後の避難所である』

超大型加速器国際リニアコライダー(ILC)」計画に関する文部科学省有識者会議の第3回会合が21日、同省であり、総建設費が現時点で約1兆912億円になると報告された。研究者グループが算出していた加速器本体などの工事費に人件費を加えた。
 研究者グループがまとめた技術設計報告書の試算を踏まえ、有識者会議の部会が見積もった。内訳は加速器本体工事8309億円、測定器766億円、人件費1837億円。建設地が未確定のため、用地取得費とアクセス道路やライフラインの整備費などは積算されなかった。
 ILC施設の年間運転経費については光熱費約390億円、人件費約101億円の計約491億円になると報告された。
 会議では、文科省の委託を受けた民間機関によるILC計画の経済波及効果についても説明があった。経済効果は建設から20年間で4兆4606億円、雇用創出は25万5000人の見通し。ヒッグス粒子の存在を確認した欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)の例を基に試算された。
 有識者会議は日本学術会議から指摘されたILC計画の課題を調査、検討する目的で文科省が2014年5月に設置し、15年度末をめどに結果をまとめる。
 ILCについては国内外の研究者組織が北上山地を候補地に選定している。

 河北新報(2015年4月22日)より。

 

国際リニアコライダーとは加速器計画のことです。微粒子を加速させて、それを衝突させて何が起こるか見ようという話ですが、それには巨大な実験装置が必要です。ちなみに理研加速器のSpring8は山を削って山の周りを一周しています。物理に関する科学的な意味はあるのでしょうが、無駄だと思います。

 

いくらなんでも1兆円なんて馬鹿げています。物理屋の独善的な関心と土建屋、政治家の利害が一致したということでしょう。昔、朝永振一郎は、科学者は国の研究費で、自分の知的な好奇心を満たしていると言っていました。その際、国はパトロンのようなものだと言っていました(そこには若干の『てらい』というか、『恥じらい』のようなものがあったと思いますが)。しかし、もうそんな構図が成立する単純な時代ではないでしょう。もちろん、基礎研究では国がパトロンであることは変わりありません。しかし、国にはパトロンとしての金はないし、科学にかかる費用が高くなりすぎています。いわゆるビッグサイエンスというものです。東北も、震災を引っ張り出して、箱モノを作ろうとしています。物理屋土建屋も政治家も国のためになるといっていますが、結局自分のためです。自分の、物理に関する知的欲求、金、票田などです。『愛国心とは、ならず者達の最後の避難所である』、という言葉を思い出しました。

 

 

杉晴夫

 

論文捏造はなぜ起きたのか? (光文社新書)

論文捏造はなぜ起きたのか? (光文社新書)

 

杉晴夫による論文ねつ造の本を読みました。本の内容は、研究者が研究費獲得のため、厳しい状況に置かれていることについてや、かつての優れた国内外の研究者についてなどです。 

本で取り上げられている研究者の一部、知らない名前もありましたので、勉強になりました。また、野口英世について厳しい評価が下されているのも興味深いです。

大学の研究費が減らせれたため過酷な競争が起き、ねつ造が生じるとの指摘にはある程度共感できますが、著者の感覚があまりにも古い気もします。分子生物学や分子遺伝子学に対し、攻撃をしていますが、今時そんなことをいう人がいるなんて驚きました。ただ、研究の生き字引の語る本として楽しめそうです。

 

 

研究費獲得状況

科学者の研究費獲得トップ30というのが、日経バイオテク『6/15号』にのっているようです。自分はそのウェブの会員ではないのですが、記事を目にしました。

 

それによると、やはり再生医療関係が多いようです。一種のバブルのようなものだと思います。10年後にこの騒ぎは何だったのかと言っていると思いますが、無駄のないように使っていただきたいですね。立派な税金ですから。

 

脳科学 

脳科学者についていろいろ議論されていますね。脳科学者というのは、誰にでも名乗れるし、タレントのようなものではないかなど。または、論文の被引用回数が少ないなど。情熱大陸で脳科学者が出てくるようで、一部もめています。

 

こういった議論をみると、日本はまっぷたつになってしまったのかなと感じます。片方に科学とは無縁で、面白ければ何でもいいという人たち。

もう片方には、科学的厳密さを求める人たち。これは、科学者に多いかもしれません。

 

話の流れから言って、私が後者を支持すると思われるかもしれませんが、どっちも視野が狭いのではないかと思います。例えば、脳科学の分野は、まだ分子生物学のように規模が大きくないので、論文の引用も少ないのかなと思います。

科学的な厳密さを求めてみても、そういった中でメインストリームにいたはずの人間、例えば加藤氏のような人間が出てきてしまいます。

 

東京大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授のグループによる論文不正問題で、同大科学研究行動規範委員会が26日、論文33本でデータ捏造(ねつぞう)などの不正行為があったとする最終調査報告書を発表したことを受け、加藤氏は「到底承服できない」とするコメントを発表した。

 


 これに対し、加藤氏はコメントで「関係各所に膨大な労力をおかけしたことを心よりおわびする。論文作成や受理の過程で、強制的な態度や過度の要求などをしたことはない。最終報告は私の弁明を十分に考慮せず、一部の証言のみに基づいている」と釈明した。 最終報告は、論文33本に捏造や改ざんが行われ、加藤氏ら計11人の不正行為を認定。「加藤氏が著名な学術誌への論文掲載を過度に重視し、そのためのストーリーに合った実験結果を求める姿勢が甚だしく行き過ぎていた」などと指摘した。

 同委員会は外部からの指摘などを受け、昨年9月に調査を始めた。

 

毎日新聞より

 

 自分とは全く別の人間が不正をしているような人間がいる、というのは誤った認識だと思います。多かれ少なかれ、後ろめたい部分、不適切かもしれないものを抱えていると考えた方が自然なのではないでしょうか。

論文不正、マック

 論文不正事件がまたもや騒がれていますね。ネットで画像の不適切な処理に対して、疑惑が持ち上がっているそうです。論文の著者は様々なようです。

ところで、よくあるインターネットの不正疑惑に対して、その真実はどうなのかがよくわかりませんね。例えば、スノーデンという人が国際的な機密を暴露していましたが、こういったものは真実度は高いといえるでしょう。

しかし、ネットの掲示板レベルで書かれている論文の不正指摘がどれだけ真実なのかははっきりしません。おそらく画像処理ソフトで論文の画像を拡大し、似ているとか,線が入っているとかのレベルなので、何とも言えません。よく掲示板で芸能人のだれだれは在日韓国人だとか適当なことを言っていますが、そのレベルの指摘もあるでしょう。

 

話は変わりますが、マクドナルドの異物混入事件が拡大しています。人体に影響あるものは厳しく処分されなければならないとしても、報告されたものがすべてマクドナルドの責任かどうかはわかりません。以前どこかで聞いた話では、異物が混入したとの苦情の多くは、消費者の商品開封後などの混入によるものが多いそうです。

 

一度問題になるとイナゴが集まるように集中してしまうのは日本人の悪いところですね。以前ガードレールに謎の金属片が付着しているといって、ニュースで騒いでいましたが、単なる車等の接触によるものだったということもありました。また、放射性物質が都内の住宅地のある場所でなぜか高いという話もありました。いずれもたいした話ではありませんでした。

 

一度誤解によるものも含め情報を集め、適切に対処していくという方が賢明と思われます。もし、保健所等で厳しく対応しなければならない問題なら、その時、マクドナルドを徹底的に批判すればいいと思います。

 

再生医療

STAP細胞の結論が出たようですね。

しかし、一体この騒ぎはなんだったのかという気もします。

週刊誌やインターネットレベルではここぞとばかりに叩いて、私生活まで踏み込んでいました。当然、そんなことする必要はありませんでした。科学の本筋とは大きくかけ離れています。

 

もともと再生医療が成功するのかどうかは不透明です。昔はDNAの構造決定するといい、その競争に日本が負けると大変だと言っていました。その次はタンパク質で、さらにナノテクノロジー、さらには宇宙事業…と続いていきます。いずれも日本が国際的な競争に勝ったのかも怪しいですし、その反省もありません。

iPS細胞の話題で持ちきりですが、日本が再生医療で成功するかも同様に不透明です。しかし、そのことを口にしたら袋叩きに合うでしょう。企業や大学から次々と研究が生まれ、お金の流れも円滑に進まなければなりません。そのような未来があるかどうか。わたしは10年後には再生医療ではなく、「次こそは○○の時代。日本はその競争に勝たなければならない」と相変わらず言っている気がします。

 

 

エボラ

エボラウイルスの勢いがなかなか止まりませんね。沈静化した地域もあるようですが、完全に抑え込んだとは言い難いでしょう。

 

気になったのは治療薬の件です。数か月前、WHOは実験中の薬に関して、患者に告知することを条件に使用するとありました。記憶はあいまいですが、まだ未承認でしたし、治験も進んでいない薬です。誰も気に留めていませんでしたが、私は少し疑問に思いました。治験もまともにやっていない薬に関して、緊急性を要するというだけで、使用していいのでしょうか?

 

おそらく、使用のためのアリバイのようなものが、告知ということなのでしょう。インフォームドコンセントとも言えます。しかし、アフリカでまだ教育が十分に行き届いていない地域で薬の危険性を告知したところで、意味があるのでしょうか?

 

話は少しずれますが、日本でかつて、薬害エイズ事件というのがありました。患者に危険性を知らせず、輸血したというものです。当時の役人や医療関係者、患者にとっては、緊急性を要するものであり、彼らは追い詰められていたのだと思います。しかし、よい結果を生みませんでした。

 

まだ、安全性の確立していないものを人間に投与するのは極端に言えば、人体実験です。緊急だからという理由だけで倫理に反するのはどうかと思います。もっといえば、私は、一般人の「このまま世界に拡散したらどうするのだ」「私に移すな」「どうせ、放っておけば死ぬ命だ」という考えが透けて見えて気持ちが悪いです。

 

緊急事態になり、人間のむき出しの感情があらわになり、頭が痛いです。